老獪なチャンピオンというのがいますよね。パスカルペレスが米倉会長と対戦した時、米倉会長がひるんだりするとがっとペースを上げてきたり。それからエロルデもそうでした。自分も疲れてきてるんだけどペース上げてきたり、相手が打ち気になるとホールドしてしまったり。上手さやズルさがありますね。
今ギアって言いましたけどね、ギアチェンジしてスピードアップ・テンポアップするというのは効果あるんですよ。
メキシカンが総じて怖いのは良いパンチを顔面に当てると皆フォローにボディブローをまぜてきますね。だから基本練習でボディブローの割合が日本よりも多いのです。日本もその点は見習わないといけないですね。
バッティングの法則というのがあるのですよ。これは私が作ったのですけど。100%では無いですけど約8割くらいの確率でバッティングの時は頭下げている方が切らないで、顎上げているほうが切るのです。バッティングを食うということは顎が上がっているということなのです。
パンチの強い選手というのは一点集中力なのです。その瞬間パチンというキレるようなパンチ。トレーナーしていた時代にフライ級の選手の方がウェルター級の選手よりパンチの威力がある事があるのです。普通の人は信じられないでしょう。ミットが弾かれるようなパンチというのは効くのです。
連打の中にアッパーを入れるとなぜ良いかというとアッパー自身の的中率も良いんですよね。ガードというのは漢字の「八」の字形でしょう。でもその間をぬってアッパーが当たるとアッパーを打つ事によって脇がしぼるんです。大振りを途中で引き締める効果があるのです。
中南米の選手は手打ちのアッパーを上手く打つんですよ。日本なんか昔の選手は一旦ダッキングしてから強くアッパーを打つ。強いアッパーはみんな打つんですけど、早いアッパーとか、合わせるアッパーとかはあまり得意じゃない。最近は若いトレーナー達が研究して打ち出してますけどね。
よく「左だせ、左だせ」と言うトレーナーがいるかもしれませんが、左出して良くない場合もあるのです。タイミング的に、それは選手がわかりますよね。ここでジャブ出したら被せられると。それをコーナーの人が「左だせ、左だせ」と、だからケースバイケースなんですよ。
今の世界的な傾向は打ち終わりを狙う、それから打ち出そうとする直前を狙う。そういうボクシングなのです。だから打ち終わった時に自分のガードとか、打ってないほうの手をどこに置いているか、それがボクシングの科学的な進歩なのです。
アカバロと高山勝義、海老原博幸とアカバロ、サウスポー同士。ともに負けたんです日本サイドが。アカバロの右リードに負けたんです。あの頃の前は当時の日本のサウスポーは右フックなんですよ。右のジャブが無かったのです。やっぱりサウスポーでもジャブを出さないとと教え方が変わったのです。